前回のPET-CTで甲状腺に反応が見られた。
触診で腫瘍ではないことは分かっていたのだが念のため検査を行った。
超音波検査では陰性。
原因不明の炎症とのことだった。
頭頸科に回されたが、所見は同じく陰性。
念のため、針生検を行った。
速報では陰性とのことで、来週の正式結果を待つことになった。
特に心配はしていない。
万が一、甲状腺が発がんしていたとしても命を取られることはないらしい。
おそらくはガッツポーズをさせない神様のいたずらだろう。
「まだ闘病生活は終わっていない。気を抜くな。」
そう言われている気がする。
先生からも退院後は感染に気をつけるように念を押された。
突然の退院宣告である。
念の為、検査結果を待ってから退院とのこと。
…というのも、7月下旬から劇的な回復がみられたのだ。
食事は制限の範囲内であれば脂っこいものでも食べられるようになった。
ハンバーグやラーメン大盛りまで食べられる。
体重は減ったが入院時から−5kg程度だ。
一番減ったのは足の筋肉。
しかし、日々のトレーニングで直ぐに歩けるようになった。
腹の贅肉は全く変わってない。
日々のダイエットは禁止なので、退院後努力しよう。
点滴は昨日をもって全て外れた。
内服薬に切り替えたタイミングで免疫の暴走が想定されたが何にも起きなかった。
残された課題は甲状腺だけで、それがもはや解決しようとしている。
第二関門突破の時が嘘のように退院前は順調に事が進んだ。
そして、今日、二ヶ月半振りに8歳の息子に会った。
4歳の娘とは分けた。
8歳の息子の方が心配しているからである。
癌は子ども達にも影響を与える。
移植の戦場では生きることだけを一先ず考えた。
家族のケアまで考えられなかった。
しかし、子どもは親父の必死さを感じ取り、不安になっていた。
私は妻と息子に病院に来てもらった。
会った瞬間、涙が出そうになったが、親父の威厳がなくなるので堪えた。
私は以下のことを伝えた。
・父は血液の癌にかかっていて2年前から闘病してきた(改めて伝えた)
・病気は一緒のお風呂に入っても一緒に寝てもうつらない。
・病気は誰のせいでもない(息子達が悪さをしたからなったとかではない)
・父の中にいる仮面ライダー(免疫)は悪者(癌)を殺せない
・今まで2年間は仮面ライダーも悪者も殺す抗がん剤という薬を、色々試して来たがダメだった。
・今回の長い入院では、父の仮面ライダーを殺して、元気な人から新しい仮面ライダーをもらうことにした。
・でも、もらえなかった。
・代わりに赤ちゃんライダーが来た。
・赤ちゃんライダーは聞き分けがないので、父を攻撃する。
・赤ちゃんライダーが成長するまで、ぼーっとする薬を飲み続ける(免疫抑制剤)。
・でも、ウイルスが入って来たときに、ぼーっとしてしまうから、成長するまではウイルスに気を付けなくてはならない。
・父は息子とサッカーや野球、キャンプや海に本当は行きたい。
・でも、上記の理由でいけない。
・一緒にいたくないわけではないから、理解してほしい。
・一緒にできることも沢山あるから、それは一緒にやりたい。
・治ったら息子は高学年になってしまうけど、父に付き合って遊んでほしい。
・父が病気に負けるわけないだろ。
息子は、自分なりに解釈して納得していた。
病気をどう思っていたかを聞くと「可哀想だと思ってた」と答えた。
いつの間にか成長していた息子の姿に励まされた。
生存率や奏効率なんてどうでもいい。
統計に人生を支配されたくない。
必ず治して、生活を取り戻す。