先輩の前職との折り合いがなかなかつかず、創業までは時間が空いた。

待機期間中に我々は新たなグループの忘年会に呼ばれた。

向かった場所は銀座。

全く聞かされていなかったが、フレンチの着席パーティーだった。

居酒屋を想像していた私は、アルバイトで使い古したボロボロのスーツで出席してしまった。

見すぼらしい格好を情けなく思ったが、引け目を感じないように心がけた。

席には名札が立っていた。

私は自分の名前を探した。

先輩とは別の席だった。

名札を見つけると、そこには私の名前と、ある会社の名前が書いてあった。

聞きなれない名前だが、すぐに自分が入社する会社の名前だと悟った。

広告代理店が仕切るグループにいる人種は今まで見たことがない個性的なタイプばかりだった。

見る限り、自分が一番年下かその次か…。

開発会社出身の私には、全てがカルチャーショックだった。

暫くすると、新たなグループのトップが赤いマフラーを巻いて颯爽と入ってきた。

私は先輩に呼ばれ、挨拶をした。

握手を求められた。

「期待しています。」

知性、品格、個性、威厳、人格、感性、全てが混ざった圧倒的な強さを感じた。

宇宙人にしか見えなかった。

圧倒的過ぎて、私は期待より恐怖を感じた。

人生を変える師との出会いである。

 

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