こんなに希望を持てたのは何年振りだろう。
前回の入院はオプジーボの副作用に対する治療だった。
肺炎を中心に治療を行い、2ヶ月を要した。
退院後はステロイドを徐々に減らし、順調に推移してきた。
当初4cmあった胸の腫瘍は9月の時点で2cmまで縮小していた。
しかし、10月初旬の造影CT検査では、それ以上に小さくはなっていなかった。
横ばいだった為、オプジーボの効果が切れてきたことが疑われた。
無理もない。最後にオプジーボを投与したのは5月下旬だからだ。
思い返せば闘病生活で3ヶ月以上寛解状態(腫瘍がない状態)が続いたことはなかった。
大規模な治療を行っても、直後の検査では消えるのだが、悪魔は直ぐに蘇る。
私は今回も同様のことを疑った。
「4ヶ月経って腫瘍が増大しないわけがない。」
それから、3週間。生きた心地がしなかった。
もし、これでオプジーボの効果が切れたら、再投与を試みなければならない。
徐々に効かなくなった先には死の扉が待っている。
楽しい生活も束の間。
夢から醒めさせられる気持ちだ。
しかし、PET-CTの結果は前向きなものだった。
消えてなくなりこそしなかったが、腫瘍の中心に反応が見られなかった。
PET-CTはがん細胞が糖分を取り込む性質を利用して、その集積度を測る検査である。
今回の検査では腫瘍の外側に反応が見られた。
しかし、それはがん細胞によるものではなく、免疫が集合している為に反応しているとの見解であった。
信じがたい気持ちが強かったが、サイズも大きくなっていない。
素人目で見ても若干小さくなっている気がする。
過去の体験と比べると、かなり沈静化していると考えられる。
もし、活動的であったなら、1ヶ月で1cm前後成長するからだ。
主治医はあくまでも「様子見」との見解を示したが、それは私にとっては十分だった。
少し追い風に変わってきた。