勝鬨

8月1日(火)、PET-CTを実施した。

がん細胞の集積を確認する検査である。

FDGとよばれるブドウ糖に放射線を組み込んだ薬を使う。

運動性の疲労や糖分に反応するので、直前は静かに水とお茶だけで過ごさなければならない。

FDGが普段集まらないところに、ある程度の集積が確認できると癌と判断される。

生理的にも集積は見られるため、専門家による微妙な判定が行われる。

 

これを午前中に実施し、昼前には終わった。

医師からは18時に病棟の会議室に呼び出された。

会議室に呼び出されるときは大抵悪い話だ。

がん宣告、再発、再々発、再々々発、ドナー不適合、全て会議室での説明だった。

私は覚悟を決め、一礼をして席に着いた。

 

…検査の結果は陰性だった。

胸にあった0.5cmの腫瘍は消えていた。

実は多少の集積は認められた。

しかし、判定は陰性。

「多少の集積…」

すぐにスッキリはしなかった。

微妙な判定なのかどうか分からなかったからだ。

集積しているのはがん細胞ではなくFDG。

素人には、どんな可能性があるのか全く見当がつかない。

結局、治っていないということなのか?

しかし、すぐに分かった。

医師たちが笑顔だったからだ。

「全く問題ありません。」

医学的にはゼロの証明が難しいので、ある程度のところから下はゼロと解釈するという。

そんなレベルであるとのことだった。

仮に少し残っていたとしても、今は中間検査であることを強調された。

赤ちゃん細胞軍による掃討作戦が終わったわけではないということだ。

但し、ひとつだけ気になるのが甲状腺だという。

何故かFDGが集積している。

通常なら甲状腺癌を疑う。

しかし、医学的に、それは考えにくいとのこと。

手で触れる部位なので腫瘍がないことも、触診ですぐに分かった。

移植に使った薬の副作用もしくは胸の血管が異形なことに関与しているかもしれないと言われた。

「血管が異形?」

どうやら私の縦隔周辺は長い間巨大腫瘍と共に過ごして来たために、血管の迂回ルートを作ってしまったようだ。

もしかしたら、それが甲状腺に何か影響を及ぼしているかもしれないというのだ。

ただし、癌である可能性は極めて低い。

95%の確率で、何もないとの見解だった。

念のため、明日に超音波検査を行うことになった。

頭と心の整理が必要で、いつものようなガッツポーズは出なかったが、結果オーライである。

勝鬨を上げる。

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