経営者として、再スタートを切って1年を過ぎた頃、東日本大震災が起きた。
妻は第二子を妊娠していた。
情報が錯綜する中、私は大事をとって妻を義父の実家である大阪に疎開させた。
家族がいない中、仕事一辺倒の日々が続いたが、売上は激減した。
自粛ムードが追い打ちをかけ、八方ふさがりとなった。
時間と人手は余っていた。
ソーシャルメディアの研究を始めた。
当時、Twitterが流行っていた。
Facebookは新たに上陸してきたばかりだった。
我々はソーシャルメディアが企業に及ぼす影響を調査した。
調査結果は好評だった。
経営職向けの勉強会をお客様から依頼された。
大手広告代理店が主催した同様の取り組みが不評だった為、代わりを依頼されたのだ。
新たなチャンスにグループを上げて取り組むことになった。
私はプレッシャーを感じながらも準備を行った。
勉強会の準備は大変な仕事だった。
毎日深夜まで残業を行った。
本番二日前、グループ会社内の関係者全員を集めてリハーサルを行った。
グループトップやライバル、各社の役員も出席していた。
私は上手く説明が出来なかった。
付け焼刃の調査に自信が持てず、リハーサルは終了した。
出席者からのフィードバックも厳しいものだった。
まさにボロクソだった。
広告代理店の仕事の難しさを痛感した。
役員としてのプライドもズタボロだった。
リハーサル後、先輩役員が食事会を開いてくれた。
私はようやくショック状態から解放された。
既に21時を回っていたが、私は会社に戻り資料を直すことにした。
24時を回った頃、突然携帯電話が鳴った。
大阪の病院からだった。
妻のかかりつけ医からだ。
破水して緊急手術を行っているとの連絡だった。
すぐに病院に来てほしいとのことだった。
私は朝一番で大阪に向かうことにした。