私は憔悴しきっていた。
大阪から帰ってくると、周囲に謝った。
数人に大阪から連絡をしたまま、完全に仕事を投げ出していた。
勉強会は謝罪をして延期にしてもらっていた。
グループトップが自ら赴いて謝ったと聞いた。
私はどんな仕打ちでも耐えるので、何でもやりますと言った。
「今はそんな気分じゃないだろうが、可能であれば二週間後に勉強会で講演できないか?」
私は大阪に行く前日を思い出した。
自信を喪失した、あの日の経験。
しかし、その時既にどうでも良かった。
リハーサルでの経験が何でもなくなるほど辛かった大阪での出来事。
私は東吾の顔、家族の顔を思い出した。
(ここで逃げては全て暗転する。東吾も家族も望まない筈だ。)
「やらせてください。」
私は力を振り絞って答えた。
それから二週間、私は準備を進めた。
妻の苦しみに比べたら大したことない。
彼女は心だけでなく、身体も傷ついていた。
実家に帰して静養させていた。
私は長男と初めての二人暮しをしながら、勉強会の当日を迎えた。
初講演は成功した。
ライバルたちが祝福してくれた。