一本の電話が人生を変えた。
それは一人旅をしている時だった。
「何故、会社を辞めたんだ。俺に挨拶もなしに。」
20歳近く年上の先輩から起業の誘いを受けた。
「3ヶ月後に会社を起こす。一緒にやってほしい。」
私は腑に落ちなかった。
何故、一緒に働いたこともない先輩が私を誘うのか分からなかった。
理由を聞くと、退職前に引き起こした事件を快く思って頂けたらしい。
退職当時、私は入社3年目だった。
私は5年目以下の社員を全員集めて、意見陳述書を会社にぶつけていた。
会社に対するデモを起こしていたのである。
私に巻き込まれた少し上の先輩たちから、かなり煙たがられた。
「先輩たちがそんなに保守的だから会社が変わらないんだ」
「気に入らないなら参加しなければいい」
私は先輩たちを説得した。
しかし、口先だけであまり変わろうとしない空気感に苛立ち、会社を辞めた。
役員に目をつけられたのもあった。
電話をかけてきた先輩は…その時のリーダーシップを買ってくれた。
当てもなく放浪していた私に断る理由はなかった。
私は共に起業することにした。
「あの時、理想とした会社を創りたい。」
志を抱いた。
お客様は一部上場の食品会社。
直接取引が信用上難しかった。
資金も乏しかった。
私も先輩もお金を持っていなかった。
先輩がお客様に相談し、取引先を紹介してもらった。
広告代理店や宅配店など、複数社を経営する社長に出会った。
我々はその社長が出資する横浜の物流専門商社の一角を間借りすることとなった。
創業はしたが、会社設立は出来なかった。