大学卒業後は茗荷谷のシステム開発会社に入社した。
就職氷河期の中、やっと滑り込んだ会社だ。
60名ほどの社員数で、岡山にある産廃処理会社の子会社だった。
地方出身者が大半を占めていて、東京生まれ東京育ちの私は異端児扱いを受けた。
カブトムシで遊んだことがないと告白すると人間じゃないとまで言われた。
中身も外見も浮いていた私は老練な先輩に毎日しごかれた。
それでも必死になってPCにかじりついた。
当たり前だが、平日はトレーニングが出来ないまま週末を迎えた。
週末は相変わらず海に通った。
しかし、身体が思うように動かなくなっていた。
座骨神経痛を発症していたのである。
運動不足の状態から、週末に急激な運動を行っていたことが原因である。
それでも周囲から、容赦ない言葉が飛んできた。
会社でも上手くいかない。
特技のサーフィンは昔のように出来ない。
完全に自信を失っていた。
精神的に追い込まれた。
いつしか、楽しい筈のサーフィンが辛いものに変わっていた。
次第に「どうしたの?」と周囲に聞かれるようになった。
酷い顔になっていた。
気がつくと場所や時間を問わず急に涙が出るようになっていた。