幼少期

10年以上前にmixiが大ブームになった。

私はブームに乗り遅れていた。

流行りはじめてから大分経った正月にやっとmixiに登録した。

そこは小学校時代の仮想同窓会だった。

一つのスレッドで幼少期の思い出が語られていた。

「3歳で消防車を呼んだ」とか、

「スキー場でリフトの高さまでジャンプをしてスキー板を折った」とか、

「ブランコを一回転させて怪我をした」とか

「マンションの排水管を辿って7階から降りた」などが記載されていた。

「伝説のいっちゃん」というタイトルが付けられていた。

全て私の話だった。

本当の話と嘘の話が混在していたが、事実私はわんぱくだった。

近所の家の屋根に乗ったり、家と家の隙間で鬼ごっこをしたりした。

製薬会社の駐車場ではギッシリと詰まった営業車のボンネットの上で野球をしていた。

そんな私達に対して近隣の人はとても優しかった。(今でも優しい)

鍵っ子だった私は週の大半は誰かの家にお邪魔していた。

夕飯時には近所の人がおかずを持ってきてくれた。

中学生の時にタバコを吸っている姿を見つかって殴られたこともある。

反抗期には母に対する態度が悪いと叱られた。

2歳の時にペダル式の赤い自動車に乗って隣町まで行ってしまった自分を探してきてくれたらしい。

家族に男がいない自分に男を教えてくれた。

キャッチボール、喧嘩、風呂…

心の親父は何人もいた。

 

覚悟

去年の12月にステント手術を行った。胸にある癌が大きくなってきて大静脈を閉塞した。CTスキャンの画像を見た

続きを読む>>

一筋の光

私は諦めの悪い男だ。 オプジーボは前回6分の1量で投与した。それは世界的な事例に基づいた判断だった。今回は

続きを読む>>

暗雲

暗雲が立ち込めた。遂に恐れていた事態が起きた。病気が再発した。 全く腫瘍がないとは思わなかった。しかし、少

続きを読む>>

運試し

最後にオプジーボを投与してから随分時間が経った。1年弱、癌が再発しないで押さえ込まれているのは初めてである

続きを読む>>